自転車通勤制度の導入時に企業が考えなければならない7つのこと

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緊急事態宣言が解除され、東京アラートもようやく先週解除されました。コロナショックも落ち着いて来た今、皆さま出社はされていますでしょうか?
クララでは、以前より自転車通勤を認める「マイチャリ制度」を設けており、コロナ禍となった現在も大いに活用されています。今回はコロナの影響で需要が急増している自転車通勤とその制度化についてお伝えしたいと思います。

ようやく解除された東京アラート、新しい生活様式として推進される自転車通勤

2020年5月26日に緊急事態宣言が解除されたのをきっかけとして、会社への通勤も再開され、会社によっては一部リモートワークをしつつ会議の日だけ出勤といった形で、徐々にですがStay Homeが緩和されていっていると感じることも増えてきました。

しかし、緊急事態宣言が解除されたその僅か2日後の6月2日の夜間、東京アラートが発令され、先日解除されたばかりとなっています。(6月15日現在)

緊急事態宣言解除後、東京アラート発令中での生活。国が提示する3密を避けての生活として、満員電車を避けるべく自転車通勤を検討された方も多いのではないでしょうか。

そんな中、新型コロナウイルス感染症対策本部からも、対処方針として自転車通勤を推奨する旨が発表されました。

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 令和2年3月 28 日(令和2年5月 25 日変更)
> 職場に出勤する場合でも、時差出勤、自転車通勤等の人との接触を低減する取組を引き続き強力に推進すること。

これをうけて、自転車通勤制度の整備を意識されたご担当者さまも多いのではないでしょうか?
従業員が自転車通勤を希望した場合企業はどう対応すれば良いのかを解説していきます。

従業員が自転車通勤をする前に、企業がしなければならないこと

自転車通勤は従業員が希望したからといって、はいどうぞ、と許可するだけでは制度として不十分です。
考慮すべきことはたくさんありますが、その中でも優先的に検討が必要な項目以下7点について、1つずつご紹介します。

  1. 自転車保険加入を条件とする
  2. 日によって異なる交通手段の利用をどう認めるか
  3. 通勤手当について
  4. 対象者について
  5. 対象自転車について
  6. ルール・マナー・研修について
  7. 駐輪場の手配について

1. 自転車保険加入を条件とする

東京都では2020年4月から、自転車保険の加入が義務化されました。
当社では、その以前から自転車保険の加入を推奨しており、マイチャリ制度を使用する場合は保険加入をマスト条件とし、その代わり、マイチャリ制度を利用するための自転車保険の費用は、全額会社負担としています。

2. 日によって異なる交通手段の利用をどう認めるか

大雨の日や雪の日は、自転車通勤は難しいですよね?他にも、

  • お客さま先に直接赴く場合うはどうするのか。
  • 自転車通勤時、帰りにちょっと公園に寄り道したい。
  • 普段は電車通勤したいが、天気が良い日だけ運動として自転車通勤をしたい。

など、様々なケースが想定されます。
そんな時、自転車の利用をどう認めるのか。労災の判断はどうするのか。様々な懸念が発生すると思いますが、形骸化しない制度を作るには可能な限り柔軟な移動ができるよう目的外使用に制限をかけすぎないことが大切です。

3. 通勤手当について

前項にも関わって来ますが、支給額をどうするかも制度導入時に検討すべき重要事項の1つです。
自転車通勤制度を導入することによるメリットとして、経費の削減を掲げる企業さんや自治体もいらっしゃいます。
しかし、当社は自転車通勤制度の場合も通常の交通費を支給し、更に自転車保険の費用も全額負担としています。

  • こうすることにより、より多くの従業員が自転車通勤を使用することができ、制度が形骸化しない。
  • 日によって異なる通勤手段を選択する場合の清算や申請の手間を削減する。
  • 通勤費用に加え、保険・駐輪上費用を多少負担したとしても、健康増進、生産性向上、通勤時間の短縮など、様々なメリットが得られる。

このような理由から、当社では「自転車通勤を使用する場合でも、交通費は支給する」という制度設計をしています。

4. 対象者について

自転車通勤の対象者ですが、企業によっては距離によって許可・不許可と取り決めているところも多いのではないでしょうか?

当社では、あえて制限を設けませんでした。
より多くの従業員に気軽に使ってもらいたい。メインの交通手段としてだけでなく、天気が良い時に気が向いたら乗ってもらう。その程度の利用でもよしとするため、ハードルは出来る限り無くそうと取り組みました。

5. 対象自転車について

防犯登録がされていること
点検・整備・清掃がしっかりとなされていること
この2点を条件としましたが、それ以外の自転車の車種などについては、厳しく規定をしませんでした。
ママチャリ、シティバイクの他、ロードバイクなどの「スポーツバイク」や「電動アシスト自転車」も増加しており、自転車の車種が多様化している今、そこに制限をかけることは、ナンセンスです。

また、現在検討中ではありますが、会社がサポートして気軽に点検・整備を受けられる仕組みを整えようと、動いています。

6. ルール・マナー・研修について

コロナ禍で需要の増している自転車通勤により事故が増えてきています。事故を防ぐためにも、しっかりと整備されたルールに則って自転車を活用することが大事です。
クララは警視庁が認定する「自転車安全利用モデル企業」に認定されています。
これに認定されると、1年に1度警視庁の警察官の方が社員向けに講義・研修を実施してくれます。
自転車通勤制度の導入を検討されている企業のご担当者さまは、社内制度の整備が終わりましたら、是非このモデル企業登録についても、ご検討ください。

7. 駐輪場の手配について

実は、駐輪場問題が一番大変です。
従業員に自転車通勤を許可する以上、会社が駐輪場の手配をサポートしなくてはいけません。
ですが、通常オフィスが集中している場所・ビル等には駐輪場が付帯されていないケースが多くあります。
商業施設や銀行が入っているビルであれば駐輪場が付帯されていることもありますが、オフィステナントの従業員用に使用させてくれるかというと、ケースバイケースで交渉が必要です。
当社の場合は、この制度を検討した時期がオフィス移転の時期と重なっていたため、移転先の条件として駐輪場が使えるところと設定したところ、かなり候補が狭まってしまいました。
ですが、適切で便利な場所で駐輪場の確保が出来ない場合、自転車通勤制度の定着は難しく、形骸化せず活用していくには駐輪場の用意は必須となります。

まとめ

このように自転車通勤を制度化するには、様々な検討事項が発生します。当社では上記の他にも、社労士の先生と相談しながら労災についてはどうすれば良いのか、事故発生時の対応フローはどうすれば良いのか等を相談しながら整備を進めました。

クララが自転車制度を整備した頃(2~3年前)には、参考になる資料や他社制度がほとんどなく、自動車通勤の制度を参考にしたりもしましたが、情報収集に非常に苦労しました。

今は、国土交通省が発表している自転車通勤導入に関する手引きなどもありますが、まだまだ企業としての制度化の事例は少ないのではないかと思います。
コロナ禍で増加する自転車通勤について、当社が整備したマイチャリ制度を参考に自転車通勤の整備を検討されている企業の担当者さまのお役に立てますよう、ナレッジを公開させていただきました。自転車通勤制度を少しでもご検討された企業のご担当者さまへ、当社の経験談が少しでもお役に立てれば幸いです。
当社がマイチャリ制度・社チャリ制度を整備した背景とその経緯については、また改めて別の記事でご紹介できればと思います。(作成中)

参考資料)

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 令和2年3月 28 日(令和2年5月 25 日変更|新型コロナウイルス感染症対策本部

自転車通勤導入に関する手引き|国土交通省

※自転車通勤制度を導入することによるメリットや近年の自転車通勤へのニーズなど.を踏まえ、事業者や従業員の視点から自転車通勤制度の導入/実施における課題などに対応した制度設計を行えるものとなっています。

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