中国で薄毛に悩む人は2億人!薄毛対策・育毛発毛事情とは

目次

1. 中国で薄毛に悩む人は 2 億人

少々古いデータだが、中国健康促進教育協会が 2011 年 11 月に発表した「中国脱毛症人口調査」によると、中国で薄毛に悩む人は約 2 億人に達し、このうち約 1.3 億人が男性型脱毛症(AGA)だという。男性の薄毛率はおよそ 20%で、AGA に悩む人は毎年 15%の勢いで増えていることから、2015 年には薄毛人口が 2.4 億人に達すると予測している。ちなみに中国では、「髪を愛する」という意味の中国語の語呂合わせから、5 月 28日が「髪の毛の日」だ。

中国でも薄毛の要因として、男性ホルモンの影響、仕事や勉強によるストレス、遺伝などが知られているが、他にも間違った方法による洗髪、頻繁な洗髪、パーマや毛染めのやり過ぎ、安全でない食品の摂取、大気汚染、デジタルデバイスの長時間の利用、ヘアブラシを洗わない、貧血、伝染病、長期的な薬の服用など、真偽のほどが定かでない様々な情報が出回っている。また、薄毛対策についても、塩水で週に 2 回 5 分間頭皮を洗う、生姜のしぼり汁を週に数回頭皮に擦り込む、朝昼晩に 10 回ずつブラッシングするといった民間療法的なものから、特定の食品(魚、青菜、豆、ニンジン、ゴマ、鳥肉、タマゴ、脱脂粉乳など)を多く食べる、適度に運動して 6 時間以上の睡眠をとる、楽観的になる、大気汚染を避けるといったものまで様々な情報がインターネットやSNS を通じて広がっている。

特に中高年の男性の間では、若々しくてみなぎる活力イメージさせる黒髪が好まれる傾向があるが、中国医師協会によると、薄毛に悩む男性の 95%が明確な診断を受けておらず、多くの人が科学的な根拠のない方法で育毛・増毛に努力しているのだという。

2. 育毛剤・発毛剤事情

とはいえ、手軽に始められる薄毛対策が好まれるのは中国も同じで、昔からある育毛剤「章光 101」は今も根強い人気がある。漢方エキスの入った医薬品「章光 101」は 1974年の発売以来、育毛剤、発毛剤、抜け毛防止シャンプー、毛染め剤など様々な薄毛対策商品をシリーズで展開している。1980 年代には日本でもちょっとしたブームになったという。業績は公開されていないが、全国に 1,500 あまりの取扱店があり、2009 年の年間売上は約 4 億元だったという。

他にも新疆ウイグル自治区に拠点を置く製薬会社が、漢方エキス入りの発毛剤「復方斯亜旦生発酊」を製造している。ウイグル族が用いる薬用植物を配合した製品で、スプレータイプとハケで塗るオイルタイプがある。1 本 75ml 入りで 120元ほどだ。

発毛効果がある成分「ミノキシジル」が配合された製品もある。皮膚病の非処方薬として発売されている「蔓迪 米諾地爾酊」(米諾地爾はミノキシジルの中国語)は、ミノキシジル 5%を配合している。こちらも売上高は公表されていないが、2014 年に天猫(Tmall)の医薬専門チャンネルで100 万元を越える売上があったと報告されている。

もっと手軽にスーパーなどでも購入できるのが、「覇王」ブランドの薬用シャンプーや育毛剤だ。医薬品ではないが、漢方エキスが入っており、シャンプーは 400ml で 30 元ほど、育毛剤は 60mlで 70 元ほどとなっている。天猫の公式ショップではシャンプーと育毛剤のセットが毎月 1 万件あまりも売れており、2016 年の同社の売上は前年比 13.8%増の 2.6 億元と好調だ。

海外メーカーでは、イタリアの 「Foltène(フォルテーネ、中国語名:豊添)」が、直輸入品としてシャンプーや育毛剤を販売している。男性向けと女性向けがあり、シャンプーが 200ml で 80 元ほど、育毛剤が 100ml で 300 元超と少々高価だ。また日本にも進出しているロレアル パリのヘアケアブランド「Kerastase(ケラスターゼ、中国語名:卡詩)」がスペインから直輸入した抜け毛予防エッセンスやスプレーを販売している。エッセンスは 6 日分で 700 元、スプレータイプは 125ml で 350 元となっている。

翻って、中国のインターネットや SNS 上で「日本に行ったら買うべき」と紹介されている育毛剤・発毛剤としては、大正製薬の「リアップ」シリーズ、柳屋の「ヘアトニック」、資生堂の「不老林」シリーズや「薬用アデノゲン EX」、アンファーの「スカルプD スカルプジェット」、第一三共ヘルスケアの「カロヤン プログレ EX」、小林製薬の「アロエ育毛液」、女性用では資生堂の「セラムノワール N」、資生堂の「ベネフィークスカルプエッセンス」、ローコスメティクスの「髪潤々」、ポーラの「グローイングショット BK」などの名がよく挙がっている。男性用はドラッグストアで手に入る商品だが、女性用はデパートの化粧品カウンターで一緒にお勧めされて購入したもの、という印象だ。このほか育毛シャンプーとしては、花王の「サクセス薬用シャンプー」、資生堂の「アデノゲン スカルプケアシャンプー」、ライオンの「PRO TEC」といった商品がよく紹介されている。

3. かつら・パウダー事情

中国は世界有数のかつら生産地で、「2017 かつら業界ブルーブック」によれば、2016年のかつら輸出総額は 33.73 億ドルだった(全頭かつら、部分かつら、ファッション用ウィッグ、人工毛等を含む)。前年比 15.83%の減少となったが、その原因は過剰な生産能力やそれに伴う在庫の増加、中国政府による課税税率の見直しとされる。

また輸出用かつらの製造は河南省、山東省、湖南省の 3 省で全体の 81%を占めており、輸出先は北米が全体の 42%、アフリカが 33%、アジアが 15%となっている。なおアフリカへの輸出が多いのは、ファッション用ウィッグの需要が多いことに加え、女性が地毛に編み込むエクステンションに用いる人工毛の需要が多いためだ。

一方、中国国内のかつら市場は 2016 年が約 35 億元で、国民 1 人当たりのかつら消費額は 2.55 元だった。米国の市場規模はおよそ 50 億米ドル(約 345 億元)で 10 倍もの開きがあるが、中国では国民の消費能力が向上しており、身なりに対する意識の変化も進んでいることから、今後 10 年で市場規模は 300 億元を越えるとの見方もある。業界では美容業界やファッション業界と協力して新たなユーザーを取り込む戦略を進めているという。

日本ではオーダーメイドのかつらなら数十万円以上、既成品でも数万円するものが多いが、中国ではハイクラス商品が 2,000 元以上、ミドルクラスで 300~2,000 元、ロークラスの最も安いものならば 100~300 元ほどで手に入る。中国最大規模のかつらメーカーの一つ「レベッカ(Rebecca、瑞貝卡)」は、医療用かつらを中心に 2015 年時点で約3 億元の売上となっている。ほかには、海森林(Seaforest)、艾瑞美(IREMY)、唐風採、即発、許昌恒源(H&Y)、明輝、夢唯詩(MOONWISH)などのメーカーがある。

日本のアートネイチャーも上海や北京など全国に 12 店舗を展開して、「JO」などのブランド名で女性用かつらを販売している。トップ用は 3,000~7,000 元、ハーフタイプや全頭かつらは 1 万~2 万元と高価だが、購入から 1 年間は毎月無料でメンテナンスを行うなど、ローカルブランドに比べてアフターサービスが充実している。

また頭に載せるタイプのかつらだけでなく、頭皮に直接貼り付ける“貼る増毛”(中国語では「隐性补发」などと言う)もある。こちらは生え際用で数百元~、接着ベース面が輸入品ならば数千元以上と値が張るが、販売サロンに出向かなくても、スタッフが自宅まで来て“オーダーメード”で貼りつけまでやってくれるケースが多い。

もう少し手軽に薄毛を隠すことができる増毛パウダー(中国語では「补发粉」などと言う)も出回っている。ここ数年の間に、シンガポール生まれの増毛パウダー「迪科飛(DECOIFFURE)」が、国内の展示会などを通じて加盟店を広げている。

このほか EC サイトでは、Toppik、Minnow、Caboki、BEPOSH といったブランドの増毛パウダーが販売されており、価格は 1 本 100~500 元ほどだ。ただ、パウダーをふりかけるだけで永久に髪が増えると誤解する消費者が多いのか、ネットショップでは一時的な効果であることを強調したり、全く頭髪がない場合には利用できないことを赤字で示したり、原料の安全性を詳細に説明していたりする。ふりかけタイプ以外では、パフでぽんぽんとつけるものやペンで生え際に塗るものもあり、中国メーカーのものならば 20~100 元程度で売られている。

4. 結ぶ増毛・植毛事情

地毛の根元に数本の人工毛を結んで髪を増やす増毛法(中国語では「单元增发」などと言う)では、上海に本部を置く増毛サロン「黒黛増発(Hairde)」が最大手だ。創業は 2008 年だが、フランチャイズ方式で全国各地に200店舗以上を展開している。2016年 1-9 月の売上は 2,199 万元で、近く新三板市場(店頭株式市場)への上場を予定しているようだ。黒黛増発の場合、結ぶ増毛法には 1 万本まで対応しており 1 本あたり 1~2.5 元で、使用する人工毛は日本からの輸入品だという。

地毛植毛(毛发种植、植发)についても、移植用の毛髪を頭皮ごと切り取る FUT 法とパンチのような器具で毛髪を毛根ごとくりぬいて移植する FUE 法のいずれもが行われている。植毛を専門に行う病院が多くあり、FUE 法の費用は 1 株(毛髪 1~4 本)あたり 10元前後が一般的だが、主任医師を指名すると 15 元以上、院長レベルの著名医師を指名すると 20 元以上するという。トータルの費用は植毛する本数や範囲によるが、ある病院では生え際部分の費用の目安として FUT 法なら 3.6 万元(約 60 万円)、FUE 法なら 4.8万元(約 80 万円)ほどとしている。また女性向けに“富士額”を作るための植毛手術もある。日本でもかつては富士額は美人だと言われていたと聞くが、中国では今でも富士額の尖っている部分を「美人尖」と言って、高貴で美しい女性の象徴だと考える人が多いのだそうだ。男性でも生え際の植毛で美人尖を作る人もいるようで、植毛を扱う多くの病院が美人尖コースを用意している。

なお中国ではネットショッピングに際して、チャットで直接店舗スタッフに質問できるようになっているのが一般的だが、多くの病院の WEB サイトでもチャットで直接医師に治療内容や費用について相談できるようになっている。ただし植毛については、無許可での施術やあとから高額な費用を請求する詐欺事件もあるようで、手術を検討する際には正規の病院かどうか確認するよう当局が呼び掛けを行っており注意が必要だ。

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